記憶術の検討

  記憶力の強化方法には,現在の脳科学研究の成果を反映した方法から,渡辺式のような老舗まで種々の方法が在る。

  ここでは,種々の記憶術に共通するスキルを明確化し,皆の応用を期待する。

記憶術の基本原則

  私の記憶に寄れば,これを明記した本は少ないが,記憶術の第1目標は以下の意識改革が必要である。

<第1原則>

記憶しすぎると言うことはない。人間の大脳の脳細胞は生きている内に10%も使っていないので,記憶することが増えたからと言って他のことが出来なくなると言うことはない。

<第1原則の例外>

  対話中の情報の内重要事項を記憶しようとして注意を集中していると,他のことが聞けなくなることが在る。この為に,メモを取ることも重要である。(メモは忘れても良いと安心するために在る)

  ただし,ある種の業務(面接官など)に従事している人間は,対話内容を全て記憶していると言うことも知っておくべきである。人間の力は無限の可能性を秘めている。

 

  第1原則には,少し説明が必要である。今までの教育では,思考力を重視し記憶に関しては,丸暗記と言って軽く見ている傾向が在る。しかしな がら,思考する場合にも豊富な実例・関連理論を思い付けば,豊かで説得力のある論理展開が出来る。丸暗記の通り答えが出るわけではないが,豊かな思考の必 要条件として,多くの記憶が必要である。

 

<第2原則>

覚えることが出来ないのではなく思い出すことが出来ないのである。

人間の体内には,色々な情報が蓄積されている。必要な時に,必要な形で引き出せないだけである。

 

記憶強化の基礎訓練

1.記憶遡及法

上記第2原則の確認方法にもなるが,記憶遡及と言う訓練が在る。これは,毎日夜眠る前に,当日の自分の行動を時間を溯りながら思い出す訓練であ る。前日の昼食に何をとったかと聞かれて答えられない人も,今日の夕食・昼食・朝食・前日の夕食そして昼食と順に思い出すことにより,答えることが出来る ことがある。このように,思い出す訓練をすることで,自分の記憶力に自信を持つようになる。

また,散歩の後見たこと,聞いたことなどを思い出すことも有効な訓練である。この方式は,観察力の強化訓練をかねる。

2.イメージ化訓練

記憶する場合には,具体的なイメージがある方が良い。そのためには,常に物事の理解・説明時に具体的な例を考えるようにする。

例えば,接地抵抗と言う言葉に関して,地面に繋がっているアース線や,この線を通じて電気が流れるイメージを思うことである。このイメージが在ると,接地抵抗が低い方が良いと解る。

以上の訓練に続けて,以下の各手法を身につける。

具体的手法

3.基礎結合方法

具体的な記憶方法の第一は,基礎結合方法である。これは,自分が良く知っているものに,記憶すべき事を関連付ける方法である。例えば,体の部分による方法がある。

10

ひたい

あご

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

へそ

太股

ひざ

ふくらはぎ

足首

足の甲

足の裏

これで,工事担任者の認定対象の端末機器を覚えてみよう。

頭のてっぺんに,留守の旗を立てる(留守番電話)

ひたいから,火を噴いて非常通報を行う(非常通報装置)

目から出た火を隣に転送する(電話転送装置)

ボイスメールを耳をそばだてて聞く(ボイスメール)

色々な依頼が鼻に集中している(集中応答装置)

ネットワークを大口を開けて飲み込み舌で制御する(網制御装置)

あごがダイヤルの形になる(自動ダイヤル装置)

ヘッドセットで首をつる(ヘッドセット)

着信の時肩が燃える(着信表示装置)

胸のカラータイマで通話時間を測定(通話時間測定装置)

遠くの他の人にへそから監視されている(遠方監視装置)

腹を遠方からねじられる(遠隔制御装置)

股でデータ端末の入力を行う(データ端末装置)

尻に絵を描くと他の人に伝わる(描画通信装置)

太股が声を聞いて字に変わる(音声認識装置)

片方のひざに写真を貼るともう一方に同じ写真が出る(画像伝送装置)

ふくらはぎが走って同じメッセージを伝える(同報装置)

 

この様なイメージを数回繰り返した後,今度は頭,ひたい,目と言う風にからだの各部を考えると,留守番電話・非常通報装置・電話転送装置と順に思い出すことが出来る。ここで,大切なことは次の2点である。

@イメージすることは出来るだけ奇抜なイメージが良い

A痛い・熱いなどの強烈な感覚を伴うイメージはもっと良い

この手法の,もう一つの要点は記憶するだけでなく,思い出す為の手がかりとして,体の各部の利用である。記憶は出来ているのに,思い出せない場合には,この様な対策が有効である。

ここでは,体の一部を使ったが,自分の部屋・友人・適当な道のり・電車の駅など色々なものに結合して記憶できる。

 

4.数字の記憶法

数値を記憶する必要は多いが,数値の具体的なイメージは難しい。たとえば,交換端末の送出電圧が6.9Vp-pは,6の頭と9の足で制限する漫画を思えばイメージできるが,一般にはこのように便利なものではない。そのような時に,以下に述べる変換技法で記憶す ると,イメージが湧きやすく記憶しやすい。変換技法は,以下の表を用いて,記憶すべき数値を具体的なものに変換する。例えば交換端末の受信側インピーダン ス75オームは,“むね”となるので,信号を胸で受けるイメージを造る。

あ行

か行

さ行

た行

な行

は行

ま行

な行

ら行

わ,ん

0

 

5.連想技法

複数のものを記憶する場合には,個別に体や場所に結合するより,それらの物自体で連想を働かせる方が効率が良い。例えば,総合ディジタル通信端末等の技術的条件で決まってるメッセージの種類は以下のとおりである。

・呼設定メッセージ

・応答メッセージ

・切断メッセージ

・解放メッセージ

・解放完了メッセージ

これは,通信手順の中で覚えるのが自然で良いが,以下のようなイメージで記憶する方法もある。

呼設定:相撲の呼出しが土俵でセンスを持って呼び出している。

応答:呼ばれた力士が突進してくる。

切断:力士を土俵入りの刀で切る。

解放:切られた,首が解放を叫ぶ。

解放完了:首の周りで解放完了の万歳をしている。

 

参考

6.記憶力強化の為の感覚の利用

今迄の例では,強烈で残 酷な場面が合ったが,この様な刺激の強い情報は覚えやすいものである。また,心地よい風,匂いなどと一緒に覚えた情報はそのような条件がよみがえると,す ぐに思い出すことが有る。これを利用して,単なる知識とせずに,実体験の感覚を想像しながら記憶すれば,記憶力が増えることが有る。

 

7.思い出す為の手がかり

今までの議論にも合った が,記憶できないのではなく思い出せないことがネックになることが多い。この為には,常時記憶するヒントを持っておき,そこに結び付ける癖をつけておけ ば,そこから思い出せるようになる。この様にしておけば,常にそこを思い出せば,関連する事項が浮かぶようになる。

 

8.目次の記憶

勉強の場合に,全体をつかむことが後々の効率化に有効である。その為に,参考書の目次を記憶してしまえば,後はそこのどこにしまうとまとまりが良くなる。

一度苦労すれば後が楽になると言うことである。関連して,学習の70%ルールと言うことも知っておくと良い。この様な目次の内,70%が解っている場合には,残りの30%は簡単に収まるのである。この為には,70%を今まで知っていることの例え話などで何とか作り上げることが有効である。この様なコツを知っておくと,勉強が楽になる。

 

9.法律の勉強

法律は,憲法から始まって段々と詳しくなっている。いきなり細部の規則を覚えるよりも,上位の規則でその目的を明確にしたら,判断が容易になる場合も多い。

例えば,端末等の規則は お互いに接続した時に,相手に迷惑をかけないと言うことが原則である。また,トラブルが発生した時にどちらが悪いか明確にする必要が有る。この様な前提を 考えると,電圧の範囲は大きい方か,小さい方か,抵抗値は大が良いのか小さくすべきか,これらの判断が出来るようになる。

法律の条文も,理由を考えると技術として見えるものが有る。