法律に関する基礎の議論

論理的な思考を身に着ける一つの手段は、法律の勉強をすることである。日本の法律は、憲法前文の精神を、憲法の各条文で表現し、更に刑法民放など主要六法で実行に移せるようにする。さらに、実行に関しては、細かな具体的な法律を作り、具体的な数値などは、現実に合わせて柔軟に対応できるように、施行規則、施行令などに記述する。
一方、ここまで具体化しても、現実の世界で起こる事象には、それぞれの事情がある。このような現実に対して、裁判の判例を読み込むことで、具体的な世界への応用法と、法律適用の限界を明確にしていく。ある判例では、認められた、そして別の判例では、認められない、この境界を明らかにしていく過程で、法律の理解が深まっていく。
このような、演繹的な論理展開は、数学における、公理と定義から、個別の定理を導く出す論理とは別に、現実への対応力を持った論立して、身に着けるべきものである。

しかし、世の中にある、法システムは、このようなきれいな形で収まっているものだけではない。現在のように、国際化した現状では、西洋文明的な法システムが、全てではないということを、しっかり理解しておくことが必要である。特に、進化論的な価値観をもって、

「西洋文明的な法システムを持っていない発展途上国」

などと言う見方は、慎むべきだはないかと思う。

まず押さえておくべき法律は、「宗教法」である。イスラム諸国では、コーランの教えを、法学者が解釈して、色々な判断を行う。日本人は、宗教と法律は、別物と考えているが、世界の多くの国では、これは成立しない。イスラム諸国のように、直接宗教による判断もあれば、西洋文明の多くの国のように、憲法から始まる法体系を、「神との契約」により成立したものと、宗教が前提になっている場合もある。
このように宗教を基盤にしないと、国を治める、民衆を治めることができないのが、多くの国であった。日本の政教分離というか、曖昧な信仰は、世界の中でも特異である。

もう一つは、固有法と継受法の違いである。日本の法律は、律令は中国から、明治以降の法体系は西洋文明からと、外にある先生の模範を改修した「継受法」である。継受法の利点は、既にあるものを見て作るので、全体像を見ながら良い構造にすることができる。一方、欠点は、時代の変化などに、追従できないことがあるということである。律令制度は、「私有地」という概念で矛盾が出た。現在の憲法では、自衛隊という「令外の官」が生まれている。
一方、固有法というのは、現実対応で生まれた法律である。この法律は、多くは前例の積み重ねを、一般化して法律にしたものである。律令制度の私有地に関する不備は、結局は鎌倉幕府の私有財産に関する裁定の法律化である、貞永式目を生んだ。近代法規の誕生の国である、イギリスでも、多くの法律は判例の積み重ねである。
このように、固有法の場合には、抽象化し一般化する、帰納的な論理が働いている。

法律のシステムと、一言で言っても、このように多くの形があることを、知っておくべきである。