鈴木良実 について

60代のおじさんです。長年勤めた会社では、ソフトウエアのエンジニアから 社員研修を主に担当してきました。 またある縁で、大学の学外講師としての経験もあり、 学生さんの状況もある程度は理解しています。 この経験を活かして、就活などから管理者研修にまで 役立つ、「知識の活かし方」について情報提供していきたいと思います。

多様化時代の管理職・総合職

多様化時代の、管理職や総合職は、従来の単一的人材管理とは異なり、業務に対するきめ細かい分解的理解と、個々人の状況に対する配慮の両面が必要である。そのために、総合職希望者は、テイラーの科学的管理法を、きちんと読み込むべきである。『科学的管理法』の反例として持ち出されることが多い『ホーソン実験』は、人間性重視と言われるが実際は作業者への丸投げであり、テイラーの方がきちんと人間観察を行っていたという事実に向き合わないといけない。

また、『セル生産』に関しても、実際はそれを実現できる作業者は、図面をきちんと読める作業者であり、ある程度以上の能力者に限られている。能力が高い人材だけをそろえて、仕事するというなら、管理は最低限でよい。しかし、多様な人材を活用する場合には、業務をきちんと分割し、それに対して自分の部下の能力や、家庭状況を配慮して、負荷処理計画を立てることがスタッフ部門や管理職の仕事である。この時管理職には、人間的魅力より、知的な支配力が重要となる。
またこの時、業務全般を見渡して、改善がきちんとできれば飛躍的に成果が出る可能性がある。このような、能力のある管理職、スタッフとしての総合職が、多様化人材の活性化には有効である。

管理職の立場論

管理職は、一国一城の主として自己の裁量権を持つ。これをしっかり認識しないといけない。投資の権限がある。人材や設備に関する投資もある。人件費を単にコストとみるか、投資とみるかによって大きく違ってくる。
逆にこの自由がない、『名ばかり管理職』を作っている経営は、間違っている。また、管理職は、部下としての立場でもある。従って、自分が預かっている組織の手に余る問題や、権限外の問題は、上司や他部門の助けを得る必要がある。
しかるべき権限を使っても解決できない、これはきちんと表明すべきであり、それに対して上司はきちんと対応すべきである。
「がんばれ」
とだけ言う上司は役割を果たしているとは言えない。

インターンシップ参加の心得

現在のインターンシップは、採用活動に直結していることも少なくない。
そのような場において、どのような振る舞いが良いのか、文書作成の観点で考えてみた。

まず、必ず行うべきことは、自分が行ったことの正確な日誌をつけることである。事実関係を記載する、これがなければ何も進まない。次に、感じたことを記載しておく。事実と感情を分離し、記録することは、まず第一次資料として大切である。

次に、そこから感想を加える作業に入る。これは上記の感情として感じたものではなく、学生としての知識を生かして書くものである。これも2つの段階がある

一つは、説明の段階である。これは自分の知識で、今行われていることを説明してみる。説明と言うと大げさに感じるかもしれないが、学生生活で学んだ『専門用語』を使って記述する。これだけでも見通しが良くなる場合がある。例えば、「損益分岐点」などと言う言葉を使ってみる。

もう一つは、改善の提案である。これは、今行われていることに、何か改善できないか、疑問を持ち、意見を言うことである。ただし、大切なことは、学生の意見は、半分以上は実現できないということを、心得ておくことである。直接教科書の通りには、まずものごとは動かない。現在のものごとは、何とかそれで動いている。これを知ったうえで、参考意見としての提案を行う。これが一つの成果の示し方だと思う。

積極さと謙虚さのバランスが、高い能力を示すことを知っておいてほしい。

文系の学生の就活について

近頃、大学の文系学部を減らすという話を聞く。これには、ある経営コンサルタントの意見などが影響しているらしい。彼の言うL型大学と言う話には、実学志向と言う大筋には評価すべきものがあるが、教える内容に関しては、今一と言う感じが強い。

企業で社員教育をしてきた経験から言えば、変な実用に走るより、三段論法によるきちんとした論理の組み立て方などの、基礎教養をしっかりさせてほしいと言う想いが強い。もっと言えば、マックスヴェーバーの、文化の比較手法などの考え方を理解させ、応用できるようになってほしいと思う。

さて、この話で私が腹立たしいのは、大学側からの反論が弱いということである。自分たちの教えていることが、しっかりした考え方を作るのに役立つか、しかもそれが現実の世界でも、ものごとを考える基礎となる。このようなことを、しっかり言えないのだろうか。

実は、私が就活で指導した子の経験でも、学生時代に学んだことを、仕事で生かすという観点で、エントリシートなどに書けていない子を見受けた。

本当の総合職と言うならば、広い視野で情報を集め、強靭な論理性で議論して、提案をまとめる力は必須うだと思う。そのために、文系の教養は重要だと思う。

面接で落とすべき人採用すべき人

極端な題目をつけたが、面接でこれはお断りと言う人がいる。言い換えれれば、面接はこのような人を排除するために行うという採用側の本音である。

具体的には、

内定までの人

このような内定が目的の人でも、入社後頑張ってくれるなら良いが、内定だけが目的で、後は胡坐をかくような人は採用したくないのが本音である。

もう一つは、

トラブルを起こしそうな人

である。対人能力を言う場合には、この点を考えていることが多い。
今では、SNSへの不用意な投稿なども注意すべきである。

この話、もう少し思いついたことがるので付記しておく。(2015/3/16)

内定後、入社後も成長するためには、自律的な成長力が必要である。このように自律できるためには、評価基準がしっかりしていないといけない。評価を自分で行う力が大切である。そのような評価を行うためには、全体的総合的な視野が必要である。

ただし、総合的な視野と言うことは、自分の価値観や世界観ができているということである。これが悪く働くこともある。つまり自分の世界観だけしか受け入れない人間になってしまうと、会社の流儀などをすべて否定してしまう。これでは仕事ができなくなる。

自分の世界観をきちんと持ちながらも、会社の世界観と言うか、状況に応じた世界観に合わせていく。他人の世界観もあるという発想が重要である。このように他人を大切にし、しかも自分も大切にすることが大切だと思う。

 

 

 

面接において確認すること

就活などの面接において、面接官はどのようなことに注目するかを書いてみた。

一般に面接の流れは、エントリーシート内容の要約を2~5分程度の決められた時間で報告させる。そしてその内容に関する、面接官からの質問が続き、最後に面接者に対して「何か質問は?」と言う形で確認する。この各段階で着目する点は、以下のようになる。

エントリーシートの内容の説明においては、決められた時間内に、要領よく話をまとめる能力が試される。特に、結論が明確であり、その論拠と関係づけがきちんとできているか、借り物一般論だけでなく、自分の意見となっているか、体験的なものと考えがきちんと整理されているかが、一つの注目点となる。このように整理された話方ができる人間は、『地頭が良い』と評価を受ける。

また、定番である「学生時代に頑張ったこと」の説明では、ものごとに対する取り組み姿勢、その中での対人関係、そして何を大事にしているかなどを、知ろうとする、一方、「入社後の将来像」などでは、これからも成長を続ける姿勢が問われることになる。『内定までの人間』の排除は、重要な項目である。ただし、内定後のしごきに耐える見た場合には、『とりあえず内定が目標』の人在でも員数合わせにとることはある。

そして質疑応答では、質問に対して、きちんと答えが返ってくるかを見る。質問の意味が理解できなかったり、自分の思い込みで見当違いの答えが返ったりする人間は、対人スキルが低いとみなされる。

このような観点で、面接を見るのも一つの考えである。

納得されやすい話の仕方

説得力のある話方には、単なる論理的と言うものを超えるものが必要である。特に、日本語のコミュニケーションでは、高度の文脈依存性があり、話題の舞台を共有しているという、暗黙的な前提がある。従って、日本語の論理展開は、西洋的な三段論法より、以下の形が多い。

XXはYYである。
YYならばZZであるということは、当然のことである

このためには、YYと言う言葉のイメージがしっかりしていないといけない。逆に、記号の独り歩きによる混同も避けなければならない。例えば、ある火山災害の時に、自衛隊を救難派遣した。そこで、装甲車を出したが、『戦争用の車両』を出したということで、非難した評論家がいた。このような人は、『戦闘用』と言う言葉だけに反応したのであり、実際に火山弾などが降ってくる、危険な地域における防弾車両の効用を、考えていない発言である。

このような発言を、地に足がついていないというが、現実の状況と記号の関係は、抽象のレベルをきちんと見ながら評価する必要がある。このような抽象度の扱いと、前提条件の確認をきちんと行えば、説得力のある議論ができる。

文書表現における形式の効果

若い人たちの多くは、文書作成を苦手としている。これは今に始まったことではない。少なくとも私が会社に入った三十数年前から、若い者の文書はダメとよく言われていた。そして私自身もそれを実感していた。

そして、今になって思うと、その原因の一つは、形式を知らないからだと思う。そこで世の中を見直してみた。確かにいろいろな文書には、それなりの形式がある。例えば論文には、色々な作法と形がある。このような形式に当てはめることで、考え方を整理しまとめるが、進めやすくなる。

特に会社生活では、「QCサークル活動」が、このような文書作成に、役立つと思う。
QCストーリーは以下の形である。

  1. テーマ選定:問題点の明確化
  2. 現状の把握と目標の設定
  3. 活動計画の作成
  4. 要因の解析:原因と結果の関係を明らかにし真因を追求する
  5. 対策の検討と実施:種々のアイデアを検討する
  6. 効果の確認
  7. 標準化と管理の定着:規則などで歯止めを行う

このような形でまとめることで、検討書などを作るときも、書きやすくなる。また、QCサークル活動では、色々な立場の人が参加するので、種々の見方で議論する。その中で、矛盾する要求を解決することで、協創関係が成立し、新しいものが育つようになる。

これを応用して、自分一人でも複数の見方をしながら検討し、矛盾した要求に対して、広い観点から答えを出す訓練を行うことは、今後の成長に役立つと思う。

 

学者と経営者の違いについて

科学的経営者の立場

科学的経営者の立場

学問を仕事で生かす時、立場の違いを図式表示すると、上図のようになる。学者の理論的検討は、あくまで客観的な立場で行うが、経営者の検討は自分の問題として問題領域に棲み込んでいる。

ただし、従来の経営では、経験的なものが多かったが、今後は理論的な知識も多く使うようになる。このような自分が棲み込みながら、色々な理論知識を使うのが新しい経営者である。

なお、学者と経営者の価値観の違いがある。学者はどうしても、論文となる題材を求める。そこでは、しっかりした論理的な展開を重視し、決められた前提から答えを導く。一方、経営者は現実問題への対応が大切なので、見落としがないような総合的な視野を求め、論理展開より直感的な納得を求める。

学者と経営者の違い